嗅覚は、五感の中で最も強く記憶や感情と結びついています。 例えば、太陽を浴びた布団のにおい、花火の煙の匂いから、あなたは何を感じますか? 香りは、特定の場面や体験を思い出させると同時に、時に情動的な反応を呼び起こします。 感情や記憶の一番そばにある五感が嗅覚であり、 このことは嗅覚が様々な脳の部位と結びついていることを示しています。 つまり、においには脳に働きかける力があります。
嗅覚は加齢によっても自然に衰えてきますが、 近年、サルコペニア(筋肉の衰えによる身体機能の低下)やアルツハイマー型認知症といった、 いわば“老化が早く進みすぎる疾患”の患者様では、 嗅覚の低下を伴う場合が多いことが判ってきています。 サルコペニアについては嗅覚の衰えによる食事量の低下と関連があり、 認知症では病気の進行によって早くから障害を受ける脳の部位(海馬)が、 香りと記憶の関連付けを司っているからであると考えられています。
これらの疾患では、嗅覚障害は発症に先立って現れます。 特に認知症では90%以上の方が症状の初期段階で嗅覚障害を示すとの報告があり、 嗅覚検査が認知症の早期発見につながる可能性が期待されています。 また、嗅覚を刺激する、つまり様々の香りを嗅ぐことで認知症の進行を 遅らせることができそうだといったことも分かりつつあります。
嗅覚は聴覚や視覚に比べると軽視されがちですが、 特に高齢者の健康と密接なつながりがあることが次第に明らかになっています。 しっかり鼻呼吸して、においを感じる毎日を送りましょう! |